| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-026 (Poster presentation)
虫媒花の花形態は、訪花昆虫の誘引効率の差異を介して適応度に直接影響することから、一般に強い安定化選択を受けていることが期待される。そのため、花形態に集団内変異がある種は、花形態の適応度への効果を検証するとともに、安定化選択の予測に反して変異が存在しているメカニズムを研究するのに最適な材料である。キク科の「花」は、合弁の花(小花)が集合した花序(頭花)である。この小花には舌状花と筒状花があり、通常、「花」の周辺部は舌状花である。しかしながら、長野県天竜川中流域支流にのみ分布する二年生草本のツツザキヤマジノギク Aster hispidus var. tubulosus(以後、ツツザキ)は、周辺部に舌状花から長い筒状花までの変異(以後、花タイプ)が集団内に存在する。本研究では、自生地における各花タイプの頻度を把握すること、さらに、花タイプの違いと結実率の関係を明らかにすることを目的とし野外調査を行った。3年間の分布調査の結果、ツツザキは河川敷にパッチ状に分布したメタ個体群を形成しており、パッチ微環境は不均一であること、そして、各花タイプの各パッチにおける出現頻度が異なることが明らかとなった。さらに、花タイプの頻度がパッチ微環境や年によって説明されるかどうか解析した結果、開空度が低いパッチほど、また、年が経過するほど筒状花タイプの頻度が低くなることが明らかとなった。他方、開空度が低いパッチでは筒状花タイプの結実率が低くなることが明らかとなった。本発表では、これらの結果をふまえて集団内の花形態変異の頻度の変化について議論する。