| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-029 (Poster presentation)
佐渡島の植物相は本州日本海側と比較して特殊であると言われており、その中でも国仲平野を挟んだ大佐渡と小佐渡の2つの山地で植物相が異なることが特徴的である。これまで佐渡島の植物については島の気候要因との関連性を調べられてきたが、分子系統地理学的に調べられた例は少ない。また、佐渡島は本州との間にある佐渡海峡が海深200m以上であることから、第三紀末期から本州と接続していないと言われている。しかしながら、佐渡島には重力散布型種子のブナ科をはじめ、本土との接続性を示唆する多くの植物種が分布している。本研究は、佐渡島における植物種の地史的要因を明らかにするため、両地域に広く分布するミズナラQuercus crispulaを対象に佐渡島と本州新潟県内の4集団計72個体を採取し、cpDNAの非コード領域をもとに各種の系統関係およびnSSRの解析を行った。
nSSRによる遺伝的多様性の解析からは、佐渡と本州新潟県内の集団は遺伝的分化が見られなかった(GST =0.012, FST =0.015)。また、STRUCTURE解析でも各集団の差は見られなかった。しかしながら、検出された変異をもとにハプロタイプネットワークを構築した結果、各集団のハプロタイプはそれぞれ異なる傾向を示した。島内でも、北部の大佐渡と南部の小佐渡で構成するハプロタイプが異なっていた。地史的な影響もふまえて、今後はより詳細な調査・解析を行う必要性がある。