| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-030 (Poster presentation)

亜熱帯林やんばるにおける外生菌根菌群集の季節変化

*松岡俊将(京大・生態研セ),阪口瀬理奈(京大・生態研セ),川口恵里(京大・理),広瀬大(日大・薬),大園享司(京大・生態研セ)

外生菌根菌は,ブナ科など森林で優占的な樹木の根に感染し,外生菌根を形成することで宿主植物と相利共生的な養分交換を行っている.外生菌根菌の種多様性は,多くの林分において宿主の多様性を大きく上回る.多種共存メカニズムの一つとして,外生菌根菌群集の時間的(季節的)な変化が指摘されている.しかし,従来の菌学的・分子生物学的手法では菌根サンプルが多い場合の同定が困難であったため,複数年にわたる継続的な外生菌根群集の調査例は非常に限られている.加えて,これまでの研究の中心は温帯以北の森林であり,アジア地域の熱帯・亜熱帯林における外生菌根菌の多様性・群集動態に関する我々の知見は未だ乏しい.

本研究では沖縄県本島北部の亜熱帯林において外生菌根菌群集の季節変化を解明することを目的とした.2009年7月から3カ月おきに2年間計8回,菌根を含む土壌ブロックを採集した.各土壌ブロックから菌根を選び出し,Roch 454シーケンサーを用いたメタゲノミクスにより菌類のバーコーディング領域(rDNAのITS)の塩基配列を決定した.得られた配列は95%の配列相同性に基づき操作的分類群(OTU)にまとめた.各OTUはデータベースと比較することで分類群を特定し,外生菌根菌のOTUを抜き出した.

得られた121,580配列は,1029 OTUにまとまった.外生菌根菌はこのうち179 OTUであった.主要な分類群はベニタケ科(64 OTU),イグチ科(32 OTU),イボタケ科(30 OTU),フウセンタケ科(23 OTU)であった.季節によって外生菌根菌OTU数に違いはなかった.さらに,分類群ごとの出現パターンについての解析結果も報告する.


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