| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-031 (Poster presentation)
植物組織内部に病徴を現さずに生息する菌類を内生菌と呼ぶ。一部の内生菌は病原菌抵抗性など宿主植物の生存・生長にプラスとなる効果を与えることが知られているが、森林樹木の更新に内生菌が与える影響についてはよくわかっていない。森林生態系において、成木下で同種実生の死亡率が他種実生に比べ高い現象は、樹木の更新動態を説明する仕組みとしてよく研究されており、その要因として樹種特異的な病原菌が同種実生を枯死させることが知られている。一方、成木下で他種実生の生存・生長が周辺環境に比べ良くなる可能性についてはほとんど検討されていない。本研究では、内生菌による他種実生への病原菌抵抗性の付与が他種実生の生存率を高めている可能性を検証するため、ミズキ実生の内生菌の種組成に対する近接する成木の影響および内生菌の病原菌抵抗性を明らかにすることを目的とした。
同種(ミズキ)および異種(ウワミズザクラ)の成木下で発芽したミズキ実生の葉から培地上で内生菌を分離し、形態観察およびDNA分析によって同定した。結果、32分類群が分離され、そのうち14分類群が10%以上の高頻度で分離された。中でもColletotrichum spp.は他の分類群に比べて圧倒的に高頻度で分離され、特にミズキ成木の下で発生頻度が高かった。ウワミズザクラの実生における先行研究でも、Colletotrichum spp.の発生頻度はミズキ成木下で高く、その大部分を占めたC. anthrischiの培地上における病原菌抵抗性が確認された。ミズキ実生から分離されたColletotrichum spp.についても種の同定を進め、他の高頻度種とともに病原菌抵抗性の評価を行った結果を紹介する予定である。