| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-033 (Poster presentation)
菌類の中で担子菌の1つの目を形成するサビキンは、世界で7000種以上の報告がある絶対寄生菌で、植物に対し寄主特異性を持つ。サビキンは、有性生殖によって交配型の異なる配偶子が接合し受精する。この過程では、配偶子の運搬を昆虫に依存している。昆虫は柄子蜜と呼ばれる蜜状物質に誘引されサビキンの精子器に訪れ、その際に配偶子を運ぶ。サビキンの中には形態や香りまで花に似せて昆虫を誘引する種も知られており、まさに花に擬態している。これらの形質は、何らかの方法で寄主を操作することで寄主に花で発現する形質を発現させているかも知れない。そこで、サビキンの有性世代における匂いと蜜に焦点を当て、これらの形質の発現に寄主が関与しているかを調べている。誘引物質である匂いと蜜に関して、花(寄主)とサビキン(寄生者)を比較して調べた。匂いでは、花とサビキンの精子器から揮発性物質を採集・同定し、花と精子器の匂いに類似性があるか調べた。花と精子器で類似した物質は検出されなかった。よって、サビキンは媒介者への誘引物質として匂いを利用している可能性が低いことが示唆された。蜜では、蜜腺形成に関与するCRABS CLAW (CRC) 遺伝子がサビキンの柄子蜜部位で発現しているかを調べた。ナシに感染しているサビキンの柄子蜜部位では、ナシのCRC遺伝子が発現していた。よって、ナシに感染しているサビキンは、寄主の遺伝子を操作して柄子蜜を発現させている可能性が高いことが示唆された。