| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-049 (Poster presentation)

カラマツの長枝葉と短枝葉の光合成及び環境ストレス応答の季節変化

*石森和佳,小野清美,長谷川成明,隅田明洋,原登志彦(北大・低温研)

カラマツ(Larix kaempferi)は東北地方南部・関東地方・中部地方の亜高山帯から高山帯に分布している。日当たりのよい乾燥した場所が生育に適し成長が速い為に、北海道の代表的植林樹種である。針葉には乾燥・低温・強風に適応した形態と機能があると考えられていて、温暖な地域でも寒冷地でも常緑のものが多い。日本に自生するマツ類ではカラマツは唯一の落葉針葉樹である。またカラマツは異型葉性であり、春先に一斉開葉する短枝葉と順次開葉をする長枝葉の2種類の葉をもつ。

本研究では落葉針葉樹カラマツの落葉時期を決定する環境要因を調べる為、葉の光合成速度、窒素含有量、クロロフィル含有量を測定した。また、環境ストレス応答の季節変化を調べるために光化学系Ⅱの最大量子収率(Fv/Fm)、クロロフィルa/b、カロチノイド含有量を測定した。材料として低温科学研究所敷地内に植えられているカラマツ5本を用いた。サンプリングは6月中旬から11月下旬まで毎月2回行った。

10月下旬に短枝葉から黄葉が始まり11月下旬に完全に黄葉し、短枝葉が長枝葉よりも先に落葉した。光飽和での光合成速度は6月中旬から10月上旬まで長枝葉で短枝葉よりも高くなる傾向が見られたが、10月下旬以降は短枝葉の方が高くなる傾向が見られた。また、黄葉したものではほぼ光合成速度は0であった。Fv/Fmは10月まで長枝葉・短枝葉ともに0.8を超えていたが、黄葉とともに値は下がり落葉直前には値は0に近くなった。乾燥重量あたりの窒素含有量には長枝葉と短枝葉での大きな違いはなかった。黄葉とともに窒素含有量は低下し落葉直前時には黄葉前と比べると約40%にまで減少した。

本発表ではクロロフィル含有量、カロチノイド含有量の測定結果も合わせて、カラマツ葉の環境ストレス応答と落葉について異型葉による違いもあるかを含めて議論する。


日本生態学会