| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-055 (Poster presentation)

日本に生育するカヤツリグサ科植物のダウシフォーム根形成に土壌リン濃度は影響するか

*枡田元気,(広大院・生物圏),白川勝信(高原の自然館),和崎 淳(広大院・生物圏)

ダウシフォーム根とはカヤツリグサ科植物にみられる特殊な形状の根で、側根に対して無数の根毛が密生した房状の構造をとる。ダウシフォーム根の特徴として、水耕栽培実験下では低いリン濃度に反応して形成されることや、土壌中の難溶性金属態リンを溶解する有機酸や有機態リンを分解する酸性ホスファターゼの根からの分泌能が通常の根よりも高いことが知られている。しかし、実際の土壌中ではリター由来の有機物の多い土壌表層にダウシフォーム根が有意に多く分布することがわかっているが、ダウシフォーム根の形成が実際の土壌のリンの濃度や形態にどのような影響を受けているかよくわかっていない。また、これまでダウシフォーム根に関する研究は西オーストラリアの低リン土壌に自生する種を中心に行われており、日本に自生する種に関する研究はほとんどない。そこで、本研究では広島県および岡山県に分布するカヤツリグサ科植物13種を対象とし、植物体およびこれらが生育する地点の土壌を採取し、ダウシフォーム根形成の有無と植物体リン含有率および土壌有効態リン濃度(Bray Ⅱ法)を調べた。その結果、ノグサ(Schoenus apogon Roem. & Schilt.)、イガクサ(Rhynchospora rubra (Lour.) Makino)、ナキリスゲ(Carex lenta D. Don)の3種で採取時にダウシフォーム根形成が確認され、これらの採取地における土壌有効態リン濃度は他の10種が生育する土壌よりも低かった。さらにナキリスゲ1種を対象に広島県南部の14地点において同様な調査を行うとダウシフォーム根形成の有無や数は調査地点によって異なっていたため、土壌有効態リン濃度、土壌全リン濃度、土壌pHといった土壌特性から検討した結果について報告する。


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