| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-061 (Poster presentation)

最大樹高の異なる広葉樹15種のシュート解剖特性・成長パターンの比較

*齊藤わか(京大・森林生態)・長田典之(京大・フィールド研)・北山兼弘(京大・森林生態)

樹高成長は樹木の光獲得のため重要である。一般に、同じ光条件の幼樹では遷移初期種の方が後期種より樹高成長速度が大きく、同一種内では樹高の増加とともに樹高成長速度は減少する。樹高成長速度は樹冠最上部のシュート伸長量に相当する。シュートを構成する細胞のサイズが大きくなるか数が増えることによって、シュートは大きくなる。大きな細胞は細胞壁量に対し内腔が広く低密度の材になるが、耐乾性は低い。そのため、幼樹より水ストレスが大きくなりやすい成木では、シュートの細胞が幼樹と比べ小さくなる(Woodruff et al. 2008)。このような細胞レベルの変化がシュート伸長量と対応している可能性があるが、シュート形状(長さ・直径) や材密度等と細胞の量や質との関連、その種間差は不明である。発表者らは以下の仮説をたてた。

①樹高成長速度に対応して、低木種では高木種よりも急激に樹高に沿って細胞が小さくなり、この結果シュートが小さくなる。

②同程度の最大樹高をもつ種間においては、幼樹では遷移初期種の方が後期種よりも大きな細胞で大きなシュートを作るが、成木では細胞サイズ・シュート形状に差はなくなる。

京大上賀茂試験地に共存する15樹種を対象として、各種の幼樹から成木の約10個体について、樹冠最上部シュートの長さ・直径・材密度、葉・枝の表皮と維管束の細胞サイズ・数を計測した。

この結果、①シュート形状・材密度、細胞サイズ・数は、低木種より高木種で急激に樹高に沿って変化した。②幼樹・成木の両方で、シュート形状、細胞サイズ・数には種の耐陰性による差がなかった。発表ではこれらの結果について考察するとともに、細胞サイズ・数からシュート形状や組織の空隙率を予測し、細胞の性質と樹高成長の関係を議論する。


日本生態学会