| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-085 (Poster presentation)

ササは単独ジェネット小面積開花でも更新しうるのか?

*大倉知夏,松下通也,井上みずき,蒔田明史(秋田県立大院)

ササは長寿命で広範囲にわたって開花・枯死する特異的な生活史を持つクローナル植物とされている。しかし、小面積での開花もしばしば観察される。複数ジェネットが開花する一斉開花とは異なり、小面積開花は少数ジェネットによるものと報告され、一般にあまり結実しないため、実生更新は稀であると考えられている。ただし、結実することもあるため、小面積開花がササの更新、さらにはササの生活史にとってどのような意味をもつのかを明らかにする必要がある。そこで本研究では、1)小面積開花における開花域と周囲の非開花域のジェネット構造と種子生産について明らかにし、2)実生更新の可能性について検討していく。

調査地として秋田市近郊の5か所を設定した。ジェネット構造を明らかにするため周囲の非開花域を含めて開花地を格子状に区切り、その格子点に近接する稈から葉をサンプリングし、マイクロサテライト多型解析を行った。また、各格子点に2×2mの調査区を設定し開花稈密度、非開花稈密度、花序密度、結実率を算出した。さらに生産された種子の遺伝解析をし、親稈と比較して自殖率を算出した。実生更新の可能性を検討するため、実生が確認された1調査地に実生プロットを設置し、実生本数や地上高、光条件の測定などを行い、応答変数を実生本数、説明変数を開花稈密度、非開花稈密度、結実率、光条件とするGLMで解析した。

結実率は平均8.8%であったが、調査地間でばらつきが見られた。開花稈密度と結実率には正の影響が見られた。実生の発生は1調査区のみで確認されたが、その調査区では平均で13.1本/4㎡、多い場所では81本/4㎡確認された。実生本数には開花稈密度と結実率が正、非開花稈密度では負の影響がみとめられた。これらの結果とジェネット構造の結果から小面積開花での実生更新の可能性について考察する。


日本生態学会