| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-087 (Poster presentation)

樹冠構成種の異なる林床におけるOTCを用いた野外温暖化実験がブナ稚樹に与える影響

*黒川結一(鳥取大・院・農),佐野淳之(鳥取大・農・森林生態系管理)

気候変動が生物のフェノロジーに与える影響が危惧されている。落葉広葉樹林の林床における稚樹の生存にとって葉フェノロジーは重要である。他樹種より開葉の早いブナは、他樹種の樹冠下が稚樹の生育適地であるといわれている。そこで、気温上昇がブナ実生の葉フェノロジーと冬芽長にどのような影響を与えるのか、その影響は上層環境によって異なるのかを野外温暖化実験により検証することを目的とした。

調査地は鳥取県鳥取市扇ノ山の標高1152 mに位置するブナ二次林および耕作放棄地である。2009年10月に調査地周辺で採取したブナ種子を鳥取大学構内で育てて、実験に用いた。温暖化実験装置は気温上昇性能の異なる2種類の形状の上部開放型温室 (Open top chamber) を用いた。2011年7月にブナ樹冠下と他樹種樹冠下および全天下の3種類の上層環境に、2種類の形状のOTCを4ペアずつ設置し、それぞれのOTC内に稚樹を4個体ずつ移植した。葉フェノロジーについては2012年の春と秋に2〜4日ごとに調査した。展葉期に葉サイズを測定し、落葉期に葉の変色面積の変化を目視で6段階に分けて評価した。上層環境の評価として、2012年の春に林内のOTC上で全天空写真を2〜4日ごとに撮影した。冬芽長については2012年10月に測定した。

2012年の成長期間における2種類の形状のOTC内の日平均気温差は、ブナ樹冠下で0.20℃、他樹種樹冠下で0.11℃、全天下で0.57℃であった。気温上昇が冬芽長に与える影響は上層環境によって異なる傾向がみられた。また、気温上昇によって平均葉寿命はブナ樹冠下で3.5日、他樹種樹冠下で2.6日、全天下で2.1日長期化した。

これらの結果から、異なる上層環境と気温の変化に対するブナ稚樹の葉フェノロジーと冬芽長の応答について考察した。


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