| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-107 (Poster presentation)

水田におけるオオヒシクイとコハクチョウの好適採餌環境の比較

*松隈詩織(新潟大学・自然科学),向井喜果(新潟大学・農),布野隆之(兵庫県立 人と自然の博物館),望月翔太,石庭寛子,石間妙子,関島恒夫(新潟大学・自然科学)

渡りを行う水鳥は、世界規模で絶滅の危険性が懸念されている生物の1つである。このような渡り鳥の個体数を減少させる主な原因として、繁殖地、中継地、越冬地における生息環境の悪化が挙げられている。渡り鳥であるオオヒシクイは、環境省指定の準絶滅危惧種で、日本で越冬する。本種は国内でも新潟県の福島潟を最大の越冬地として利用し、潟とその周辺の水田を採餌環境として利用している。しかし近年、福島潟周辺の水田地帯で圃場整備や商業地開発が進んでおり、これらの事業が本種の分布や越冬個体数に甚大な影響を与える可能性が高い。そこで本研究では、福島潟周辺の水田におけるオオヒシクイの環境選択性を明らかにすることで、圃場整備等の事業が本種の分布に与える影響を明らかにするとともに、環境選択モデルを周辺水田に外挿して地図化することで、開発事業のハザードマップを提示することを目的とする。また、オオヒシクイと並んで越冬数の多いコハクチョウについても同様の解析を行うことで、両種の包括的な保全策を提案する。

2009年度の越冬期間に毎月2回、福島潟から半径約5km圏内の水田においてラインセンサスを行った。センサスでは、両種の群れサイズを計数し、利用していた水田の湛水率、耕起の有無、二番穂の量、水田の区画面積、標高を記録した。また、GISを用いて、水田から福島潟までの距離、道路までの距離、集落までの距離、バッファ内の水田面積、森林面積、集落面積などの景観要因を算出した。統計解析は2段階で実施した。景観要因のみを用いたMaxENTを行い分布規定要因を特定し、好適生息地マップを作成した。次に、利用水田の個体数を目的変数、各環境要因を説明変数とするGLMを行い、群れサイズを規定する要因を解明した。


日本生態学会