| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-128 (Poster presentation)

スキーゲレンデにおけるムラサキツメクサの繁殖生態.1 花火師ムラサキツメクサの花形成の競演

*得田奈央子,船本大智,藤浪理恵子,横井智之,渡辺 守(筑波大学・生物)

長野県白馬村一帯で開発されているスキーゲレンデには、斜面崩壊を防ぐために様々な種類の牧草が繰り返し吹き付けられてきた。播種された牧草の多くはイネ科草本であるが、マメ科の外来種であるムラサキツメクサもみられ、複数の株が集まったパッチを形成して広範囲に定着している。そこで、本種の定着要因を明らかにするため、花序形成の戦略を調査した。本種の一次シュートは地表部から斜めに伸びた後、上に向かって成長する。一次シュートは葉を5〜6枚生じ、先端部に1個の花序を形成するまで伸長を続ける。また、一次シュートの葉腋からは二次シュートが斜めに伸び、葉を2〜3枚生じながら一次シュートと同様に上に向かって成長する。その先端部にも1個の花序が形成される。全ての花序の自然高はほぼ同じだったため、株全体は柄の無い傘を逆にした様な形を示し、株の上部に花序が散在した状態になっている。調査の結果、株あたりの一次シュート数が増えると、二次シュート数も増加した。シュート数が増えると株の全葉面積は大きくなり、株の占有体積は増加する。したがって、シュート数が多い株ほど葉面積と占有体積が大きく、花序数の多い株となっていた。一方、花序当たりの花の数に大きな違いは認められなかった。花序は球状で、下部から開花を始めていくが、その順序は片側に偏って盛り上がるように咲いたため、花序の日齢に関わらず、開花部分は常に花序の頭部に位置していた。開花した花の大きさはほぼ一定で、花序の日齢と共に開花数は増加したため、花序の見かけ上の体積は増加していった。これらの結果から、本種は上空に向かって大きな赤紫の花序を呈示し続けることで、訪花昆虫を誘引していると考えられた。


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