| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-136 (Poster presentation)

印旛沼における昆虫類・クモ類に見られるオニビシ葉の利用

*中西奈津美,高木 俊,鏡味麻衣子(東邦大・理)

陸域と水域の生態系は、互いに生物群集の構成やエネルギー流入等に影響を与え合う。境界に生育する浮葉植物は、陸域の捕食者が水域で葉上の生物を捕食する際の足場や、葉上を羽化・採餌に利用するトンボ目の陸域への流入源となると考えられるが、浮葉植物が陸水域双方を移動する生物に対し与える効果についてはほとんど調べられていない。

本研究では、オニビシが陸水域双方へ流入する生物に与える影響を明らかにするために、オニビシ葉上で見られる植食性昆虫ジュンサイハムシとヒシヨコバイ、捕食者のアメンボ・コモリグモ・トンボ目に注目し、(1)葉上被食者個体数が多いことで陸域から葉上へ進入するクモ個体数が増加するか(2)オニビシの存在により、トンボ目成虫の個体数及び種数が増加するか、検証した。

調査は7月から10月まで月1回、西印旛沼沿岸部の13地点において、コドラート法及び定点観測で行った。コドラート内のオニビシ葉被度・葉上生物個体数、岸からの距離、5分間に見られたトンボ目個体数を計測した。

被度はアメンボ以外の葉上生物個体数に対し正に影響した。クモ個体数に対しハムシ個体数は正の関係が見られたが、アメンボ個体数は負の関係が見られた。トンボ目について均翅亜目の種数はオニビシ有地点で多く、7月については個体数も多く見られた。不均翅亜目ではオニビシの有無により種数・個体数に差は見られなかった。

オニビシが高被度の時、クモを含む葉上生物が多く見られた。しかしクモによるハムシの捕食が観察できなかったことから、クモがハムシ捕食者のアメンボを捕食することによるハムシの増加が推察される。これはオニビシの存在によりクモが水域へ進出でき、葉上の生物群集に影響している可能性を示す。また、陸域へ流入する生物の多様性維持を助けることが示唆された。


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