| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-168 (Poster presentation)

キューバ産アノールトカゲ属の四肢における筋骨格形態と行動生態の関係

*安西航(東大・院理),大村文乃(東大・院農),Cadiz Diaz Antonio,河田雅圭(東北大・院生命),遠藤秀紀(東大・博物館)

トカゲ亜目は種数が比較的多い系統であり、その形態にも生息環境にも大きな多様性がみられる。しかしながら、形態と行動生態の関連性における報告は乏しく、特に力学的な研究例はほとんどない。カリブ海の島々を中心に適応放散しているアノールトカゲ属(Anolis)は地表から樹上まで多様な環境に生息し、環境に適応して外部形態の多様化がみられる。また頭を持ち上げて喉袋を膨らませるディスプレイがオス特有にみられ、オス同士の縄張り争いやメスへの性的アピールなどの効果があると考えられている。本研究では、キューバ産の異なるニッチに適応した2種のアノールトカゲを用いて、四肢の筋骨格形態の力学的な評価を通して、種間および雌雄間の比較を通して生息環境およびディスプレイとの関係を検証した。

種間比較の結果、地上を走り回る種では膝および足関節の伸筋が発達し、地面を強く蹴る走行への適応と考えられた。一方、樹上を生活の中心とする種では上腕および大腿の後引筋が発達し、木に登る際に体重を支持するための適応だと考えられた。これらから、生息環境の違いが四肢の筋骨格形態の違いに影響していることが示唆された。また雌雄間を比較した結果、樹上の狭い環境に生息する種のオスでは肘の伸筋が、地上の広い環境に適応した種のオスでは上腕の内転筋が、それぞれメスに比べて発達していることがわかった。このことから、オス特有にみられるディスプレイの姿勢の維持が体を支えている前肢の筋骨格形態に影響を与えていること、そこで生じる性的二型は種間で傾向が異なっていること、そしてその種間の違いは生息環境の違いと関係していることが示唆された。


日本生態学会