| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-175 (Poster presentation)

特異な形態を持つカメノコハムシ亜科の分子系統と形態進化プロセス

*篠原忠(神戸大・人間発達環境), 山城考(徳島大・総合科学), 高見泰興(神戸大・人間発達環境)

全生物の中でも群を抜いて種数の多い昆虫類は、その外部形態もきわめて多様である。このような形態の多様性を生み出すメカニズムを明らかにするには、形態の変化に富む分類群を用いた研究が必要である。カメノコハムシ亜科Cassidinaeは、特異かつ多様な形態をもつ種を含む大きな分類群である。本亜科は、背面が棘に覆われるトゲハムシ類(有棘型)と体の周縁が扁平化したカメノコハムシ類(扁平型)に大別されるが、棘のないトゲハムシ(無棘型)や、トゲハムシの生態的特徴とカメノコハムシの形態的特徴を合わせ持つもの(中間型)なども含まれる。しかし、本亜科の形態進化プロセスについてはよくわかっていない。

本研究は、カメノコハムシ亜科の系統関係を推定し、どのように外部形態が進化したのかを解明することを目的とした。これまで主に形態形質に基づき系統関係が推定されてきたが、本研究ではより信頼性の高い系統関係を推定するために分子系統解析を行った。解析したサンプルは日本産35種に加え、データベースに登録されているものを用いた。解析はミトコンドリアDNAのCOIとCOIIおよび核DNAの28Sの塩基配列(合計約1600塩基)に基づいて行った。その結果、本亜科の単系統性が支持され、有棘型は系統樹の基部、扁平型は先端部に位置し、無棘型や中間型はその間に位置した。また、形態の進化プロセスを解明するために,得られた系統樹上に形態形質を復元したところ、有刺型が祖先的であり、そこから無棘型や中間型を経て、扁平型が派生していることが明らかになった。興味深いことに、この進化は幼虫の形態や生活史形質の変化に合わせておこっている。以上の結果を踏まえ、このような多様化を生み出した要因についても議論する。


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