| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-183 (Poster presentation)

海洋環境データと漁獲量からみた東北沿岸底生性魚類の生息域変化

*須田亜弥子(東北大・生命),土居秀幸(広島大・サステナセンター),成松庸二(東北水研),河田雅圭(東北大・生命)

生物の生息域は様々な環境要因によって決定され、環境の変化に伴い生息域も変化する。特に近年では、温暖化による環境変化が生物に影響を及ぼすことが懸念され、様々な視点からの情報が必要とされている。環境変化に伴う生息域の変化は陸上生物において多く報告されているが、海洋生物に関する研究は大西洋を中心に報告されているだけで、他の海域では十分に評価されていない。なぜなら、海洋環境変化に対する生物の影響は、陸上に比べ地理的情報や環境データが少ないために評価が難しい。また、海洋生物は分布域が広いために定量的な分布の把握は困難である。しかし、環境変化に伴う生息域の変化を解明することは、生息域に影響を与える要因を決定すると共に、将来の生息域予測にも役立てることができる。

本研究では、東北及び千島列島沿岸で漁獲された底生性魚類16種の漁獲量データと環境データを照合し、過去15年間の分布傾向を調べ、海水温などの環境変化が分布変化に影響しているかを検証した。沖合底引き網漁業漁場別漁獲統計のデータを元に、一般化線形モデルによって標準化CPUE(単位努力量当たり漁獲量)を算出し、それを漁獲に影響を与える効果を考慮した相対的な資源量とした。また、各魚種が塩分、水温、深度等にどのような影響を受けているかを検証するために一般化加法混合モデルを用いて解析した。各魚種の分布を決める要因は、いくつかある要因の中でも水温によって変動していることが考えられるため、漁獲量の高低を示す海域と水温の関係に重点を置いて解析を試みた。漁獲量データと環境データを利用し、底生性魚類の生息域を把握することで、環境と各魚種の生息域変化との関連性を明らかにした。


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