| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-222 (Poster presentation)

生態系・代謝過程を考慮した生物濃縮モデル

*中井信吾(龍谷大・理工), 近藤倫生(龍谷大・理工)

化学物質は環境中よりも高い濃度で生物体内に蓄積することがある。これを生物濃縮という。生物濃縮の程度を説明する際に重要な二つの要素がある。一つは餌生物に含まれる化学物質が体内で吸収・排出される生理学的過程である。もう一つは化学物質濃度が、「食う食われる関係」によって高次の栄養段階の生物ほど高まる生態学的過程である。

生物体内の化学物質濃度を説明する過去の数理モデルは、しばしば、排出される化学物質濃度が体内中化学物質濃度に比例することを仮定している。しかし、体内の化学物質濃度を一定に保とうとする恒常性などから、排出される化学物質濃度は体内濃度に対して非線形となる可能性がある。

生物間の「食う食われる関係」は、現実の生態系では複雑なネットワーク構造を持つ食物網として表される。食物網は3種または4種の個体群からなるモジュールと呼ばれるサブユニットによって構成され、それらが多数組み合わさったものである.従ってこのモジュールの性質を知ることは、生物群集の構造と動態を知るうえで不可欠である(Holt 1997)。

本研究では、IGPモジュールにおける生物間のフロー変化の、各生物に蓄積する化学物質量への影響を調べた。そこから、食物網構造とそこでの生態学的位置に依存して、生物中の化学物質量が決まる様子を明らかにした。また、生態化学量論の観点からこのモデルの有用性について議論する。


日本生態学会