| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-224 (Poster presentation)

どの高さを選ぶのか?山形県に生息する小型樹上性げっ歯類の棲み分け戦略

中村夢奈*(山形大院・理),小城伸晃(山形大院・理),玉手英利(山形大・理)

ヤマネGlirulus japonicusとヒメネズミApodemus argenteusは休眠場所・営巣場所として樹洞を利用する小型齧歯類である。両種は同所的に生息していることが知られているが、棲み分けや競争関係についてはほとんど調べられていない。2008年から山形県中央部において、ヤマネとヒメネズミのみが利用できる巣箱を地上高1.5mの位置に設置し、両種の利用を観察してきた。その結果、ヤマネとヒメネズミの1年間の平均巣箱利用率はそれぞれ1.7%と6.7%を示し、ヒメネズミの利用が高い傾向が示された。さらに、テレメトリーを用いたヤマネの個体追跡では、ヤマネは平均7.85m以上の樹上で日内休眠を行っていた(n=7)。このことから、2種は利用する休眠場所や営巣場所となる樹洞の高さが異なる可能性が考えられる。そこで本研究ではこの仮説を検証するために、樹洞の代わりとして2種のみが利用できる巣箱を異なる3つの高さ(1.5m、3m、4.5m)に設置し、各動物の巣箱の利用状況を調査した。調査は2011年と2012年の5月から11月に行った。その結果、ヤマネの巣箱利用は春と秋の2山型を示し、年間を通じて4.5mの高所の利用が高かった。対して、ヒメネズミは秋に巣箱利用が高まり、春の低所利用から秋の高所利用に移行した。同所的に生息している2種は、春から夏にかけては互いに独立した垂直空間を利用し、秋に重複する傾向があった。しかし、明確な競争関係は確認されなかった。この樹上空間の利用の違いは、餌資源の季節変化の影響を受けている可能性がある。


日本生態学会