| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-229 (Poster presentation)

岐阜市におけるデメモロコの生息環境と生活史

*古田莉奈,古橋芽,向井貴彦(岐阜大・地域)

デメモロコは,琵琶湖と濃尾平野に分布するコイ科魚類であり,濃尾平野では主に灌漑用のため池やこれに通じる流れのない用水路の泥底または砂泥底の底層に生息するとされている.しかし,濃尾平野に生息するデメモロコの分布情報は非常に少なく,生活史についても不明なため,絶滅危惧Ⅰ類(岐阜県レッドデータブック,2009)に指定されているにもかかわらず保全対策は何もなされていない.そこで,本研究では,岐阜市に生息するデメモロコの生息環境と生活史について調査した.調査は2012年4月から毎月1回行った.投網と簡易式定置網兼地引網を使用してデメモロコを採集し,成魚は,DNAを抽出するため右腹鰭を99.5%アルコールで保存し,本体を10%ホルマリンで固定した.幼魚は,全長と体長を測定した後,99.5%アルコールで本体を固定した.また,水質は多項目水質測定器を使用して週3回程度pH,DO,導電率,水温を測定した.また,同所的に近縁種のコウライモロコが生息するため,mtDNAのチトクロームb領域の塩基配列を決定することで確実に同定した.10%ホルマリンで固定した標本の,全長,体長,生殖腺重量,卵数を計測し,季節的な変化を調べた結果,岐阜市のデメモロコの産卵期は6月から7月であり,その時期にやや上流に遡上する傾向が見られた.また孕卵数は6月と7月に採集された体重3~9gの5個体で約1700~2400粒あり,中村(1969)で報告されている琵琶湖産と大きな差はなかった.8月以降になると,全長3cm程度の幼魚が採集されるようになった.10月以降は,調査地で成魚を採集することができなかった.このことから,成魚は下流に下り,越冬すると考えられる.


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