| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-230 (Poster presentation)
多くの生物は日長や温度といった環境の季節的な変化に反応することによって、成長や生殖を調節する。両生類においても光周期は幼生の成長や変態に影響を及ぼすことが報告されているが、生態的に意味を持つ範囲の光周期が幼生の成長や発育を調節することを明確に示した例はほとんどない。本研究では、カスミサンショウウオ(Hynobius nebulosus)を材料として光周期と温度が成長および発育に与える影響を調べた。
2012年4月に岡山県真庭市蒜山下和でカスミサンショウウオの卵塊を採集し、孵化した幼生を10~20℃の16L-8Dおよび12L-12Dの条件下で飼育した。外鰓が消失した時点で体重と頭幅を測定し、1日あたりの成長量を算出して飼育条件で比較した。
幼生期間は20℃、15℃ともに短日条件下で短くなり、野外では秋に変態が促進されると考えられる。変態時の頭幅は20℃より15℃の方が有意に大きくなったが、光周期間での違いはなかった。一方、体重は温度間と光周期間の両方で有意な差が検出され、16L-8Dと20℃で重くなった。一日当たりの体重増加量を求めたところ、温度間、光周期間ともに違いが認められず、摂食量に依存している結果となった。一方、頭幅の増加量は20℃と12L-12Dで多くなったことから、体の部位で成長量を変化させており、特に幼生期間が短く体サイズが小さくなる短日条件で頭部へより多くの投資をしている可能性が考えられる。
10℃では飼育開始から200日を経過してもわずかな個体しか鰓が消失せず、変態が強く抑制されると考えられる。生息地では湧水が常に供給され、幼生での越冬が報告されている。厳しい冬を乗り越えるためには、湧水によって凍結することのない水中で越冬する生活史戦略が適応的である可能性が示唆される。