| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-231 (Poster presentation)
多くの脊椎動物は昼行性か夜行性に分類される。これらの動物は、それぞれの光条件に適応しているため、昼行性から夜行性になる(あるいは逆)ことはほとんどない。しかし河川性サケ科魚類は、通常は昼行性であるが、冬季は夜行性にシフトする。この原因として、温度―捕食者仮説が挙げられている。変温動物であるサケ科魚類は、冬季(低水温)は代謝が低下し、少ない摂餌量でも生存できる。そのため、鳥類など昼行性の捕食者から回避するため、摂餌効率が低下しても冬季に夜行性化するとされている。一方で他の分類群では、活動時間のシフトには捕食者以外に餌資源が関与する例も知られている。サケ科魚類の餌となる水生昆虫や陸生昆虫の量も、季節と昼夜で大きく変動するため、活動時間のシフトに影響している可能性がある。そこで本研究では野外において四季を通じた調査により、餌資源がサケ科魚類の活動時間に影響を及ぼしている可能性について検討を行った。
調査は、温度の影響を排除するため水温の安定した河川において行い、オショロコマの活動時間を調べた。行動観察は四季の昼夜で行い、活動時間の違いを比較した。また、同時期に流下トラップを設置し、餌資源量を比較した。
調査河川は年間を通して水温変化が小さかったにもかかわらず、夏季に昼行性、冬・春季に夜行性という明瞭な変化が見られた。これは行動変化が温度だけで説明できないことを示している。一方、オショロコマが日中に活動していた季節は陸生昆虫の流下がみられたが、日中に活動していない季節には殆どみられなかった。サケ科魚類は陸生昆虫を好んで食べることが知られていることから、夜行性化は陸生昆虫の有無が影響している可能性が示唆された。