| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-233 (Poster presentation)
筑波山周辺において、春になると里山の池や谷戸水田にはヒメアメンボが、低地の水田地帯や市街地の修景池にはナミアメンボが飛来して群れを作って生活している。この地方の谷戸水田は8月上旬頃に水落としが始まり、8月下旬頃にはすべての水田が乾田となっていた。市街地の池には1年を通して常に水が溜まっている。4月から10月にかけてこれらの水域を定期的に巡回したところ、ヒメアメンボは8月中旬までに水域から姿を消すことが分かった。一方、ナミアメンボの群れが水域から姿を消したのは10月下旬であった。発見した群れは多くても100頭前後で構成されており、15分以内で群れのすべての個体を捕獲できた。どの群れも単一種で構成されていた。捕獲したメスを解剖し保有していた成熟卵と亜成熟卵、未成熟卵の数を調べたところ、ヒメアメンボの保有成熟卵数は6月のピークで20卵程度で、8月になるとどのメスも成熟卵をもっていなかった。保有していた亜成熟卵と未成熟卵の数は季節の進行とともに減少していった。ナミアメンボの群れには長翅型と短翅型の2型が混在していた。両型のメスとも、保有成熟卵数は40卵程度で違いは認められなかった、亜成熟卵と未成熟卵の保有数は季節の進行とともに増加していった。成熟卵の長径と短径を測定したところ、短径でヒメアメンボの方が大きかった。ヒメアメンボとナミアメンボの体長差を考慮して卵の大きさを体長に対する相対値で評価したところ、ヒメアメンボの成熟卵は短径でも長径でもナミアメンボより大きくなっていた。なお、ナミアメンボの短翅型の卵は長翅型よりも短径がやや長く、ずんぐりしている。これらの結果から、ヒメアメンボは大卵少産、ナミアメンボは小卵多産の戦略をもっていると考えられた。