| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-235 (Poster presentation)
秋のツキノワグマは、冬眠に備え脂肪を蓄積する必要があるため、エネルギー摂取を最大化させる採食行動をとっていると考えられる。野生下では、秋に多種ではなく1種の食物を中心に採食していることが観察されているが、同所的に多種の食物資源が分布する森林では、その行動の要因として探餌効率ではなく消化生理の効率が考えられる。
消化生理において、2種を食べた時にその合計よりも消化効率がプラスまたはマイナスになる非加算的効果が多くの動物で報告されている。本研究では体内滞留時間(GRT)の異なる2種を採食した場合のクマの消化生理、特に消化率および可消化エネルギーを体組織に変える効率の非加算的効果を検証した。
秋田県阿仁マタギの里熊牧場でミズナラ堅果およびキウイを、それぞれ単独、交互の3パターンで10日間自由給餌する採餌実験を行った。各実験には成獣オス3頭を用い、GRT及び消化率の測定をし、また、実験の前後には体重を測定した。
交互に採食した場合のGRTは、GRTの短いキウイ、長い堅果の中間の値となった。消化率は、全ての個体で繊維類(NDF)の消化率はプラスの非加算的効果がみられたが、可溶無窒素物(NFE)は非加算効果がみられなかった。消化率は一般的にGRTが長いほど高くなるため、消化に時間のかかるNDFの消化率でプラスの非加算的効果が見られたと考えられた。一方、NFEはGRTの長短に関わらず消化率が維持されたが、それは秋のクマが炭水化物を吸収する能力を上昇させているからだと考えられた。可消化エネルギーを体組織に変える効率は、3頭中2頭で加算的効果、1頭でマイナスの非加算的効果が見られ、2種よりも1種を採食する方が効率良い可能性が考えられた。