| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-237 (Poster presentation)

アカギツネのファミリー間での食性比較

*安生浩太(北大・環境科学),浦口宏二(道立衛生研),齊藤隆(北大・FSC)

動物の食性を知ることは、その生態の理解を助けるだけでなく、他の種との競争関係、被食者への影響の大きさ、疫病や寄生虫の伝搬などを理解するうえで有用な情報をもたらすため、これまで様々な生物種において食性分析が行われてきた。しかし、それらの研究の多くは種や地域を対象とした比較的大きなスケールで行われたものであり、集団内での食性の違いもあまり考慮されてこなかった。このため食性に関わる要因分析は、比較的大きなスケールの環境比較にとどまることが多かった。そこで、本研究ではファミリーというより小さなスケールに着目してキツネの食性を比較し、食性に影響を与えている局所的な環境の違いについて解析した。

北海道根室半島で同じ年に繁殖した9つのキツネのファミリーで食性を調べたところ、9つのファミリー全体では、多くの先行研究と同じく、ヤチネズミ属のネズミが主要な餌品目だった。しかし、ファミリー間で比較したところヤチネズミ属のネズミを食べているファミリーと食べていないものの2カテゴリーに食性が大別された。また、食性を巣周辺の環境と比較したところ、従来の研究でよく使われてきた環境指標である特定の環境の占める面積比率には食性との関連性は見られなかったが、より小さなスケールで環境比較を行うと、巣から最寄りの道路までの距離が短く、開けた場所と接するササ原が巣周辺に多いほどヤチネズミ属のネズミを多く食べるという傾向が見られた。このように、本研究では局所的な環境の違いが食性に影響を与えている可能性が示され、これまであまり考慮されてこなかった小さなスケールでの食性分析の必要性が示唆された。


日本生態学会