| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-240 (Poster presentation)
社会的に一夫一妻性の鳥類の9割以上でメスがパートナー以外の子供を残す、「つがい外父性(Extra-pair paternity)」という現象が確認されている。しかし、その行動の多様性や適応的意義は多くの研究者が30年近く研究を続けているが未だ不明な点が多い。オスにとってつがい外父性は直接的に繁殖成功の増加に繋がるが、メスにとっての適応的意義については未解明のままである。優良遺伝子仮説や遺伝的適合仮説については実証例があり、ある程度の支持されている。一方、パートナーの性的不能を補うという『受精保険仮説(Fertility insurance)』は、理論的には成立するが実証が極めて困難であり理解が進んでいない。本研究では受精保険仮説を検証するため、シーズン中に複数回繁殖するシジュウカラ個体群の特徴を活かし野外実験を行った。まず1回目繁殖で卵を偽卵と交換し、オス親に問題があり卵が孵化しなかった、とメスに認識させた。そして同ペアの2回目繁殖とコントロールペアのつがい外父性率を比べ、メス親が受精成功率をあげるために他のオスとつがい外交尾をしているか、について明らかにした。 結果、実験ペアのつがい外父性率(27.7%)はコントロールペア(15.8%)に比べ有意に高かった。また、実験ペアのつがい外父性率は過去の同個体群や先行研究と比べても高い値であった。この結果から、シジュウカラのメスはつがい相手が性的不能な場合、卵を確実に受精させるための保険として、つがい外交尾をしていることが考えられ、これは鳥類のつがい外父性の適応的意義の一つだということが示唆された。本研究は、過去30年近くにわたるつがい外父性の適応的意義の研究において、その仮説の一つである「受精保険仮説」を実験的に検証した初めての例である。