| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-242 (Poster presentation)

クラッチサイズのシーズン変化:複数回繁殖するシジュウカラにおける新しいパターン

*乃美大佑, 油田照秋(北大・環境科学院), 小泉逸郎(北大・創成)

中高緯度で繁殖する鳥類では餌資源量の季節変化が大きいため、繁殖開始のタイミングとクラッチサイズ(一腹卵数)の調節が重要になる。一般的にシーズン中に1回だけ繁殖する種・個体群では餌量のピークに合わせて繁殖を開始するため、クラッチサイズは繁殖開始時が最も大きく、その後単調減少する。一方、シーズン中に複数回繁殖する種・個体群では餌量のピークより早く繁殖を開始するため、クラッチサイズが繁殖シーズンの中盤にピークを迎えた後減少する。しかし、気候やハビタットによっては複数回繁殖者であってもシーズンを通して単調減少する例が報告されており、一概にはこのパターンがあてはまらないと考えられる。

本研究の調査対象である苫小牧のシジュウカラ個体群は同緯度のヨーロッパの個体群と比べ複数回繁殖率が高く、繁殖シーズンが長いことが明らかになっている。これはフェノロジーの違いや餌量のピークが2回あるなど餌資源量が多い期間が長いためであると考えられている。このような環境ではクラッチサイズはどのようなシーズン変化を示すのだろうか?本研究ではこの個体群について過去3年間のデータを用いクラッチサイズのシーズン変化を調べた。

その結果、2回目の繁殖ではクラッチサイズが1回目より小さくなるものの、期間中は1回目でも2回目でも一定であった。これは複数回繁殖者における一般的なパターンとは異なるものであり、かつ苫小牧の個体群に特徴的なパターンといえる。本発表では孵化率や巣立ち率といった基本的な繁殖パラメーターの他に雛の体重やふ蹠長などのデータを1回目と2回目の繁殖について比較し、この新しいパターンを生ずるメカニズムについて考察する。


日本生態学会