| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-243 (Poster presentation)
一般に、針葉樹人工林は、繁殖期の鳥類の主要な餌資源である鱗翅目幼虫が広葉樹林と比較して少なく、樹洞営巣者の利用可能な樹洞も少ないため、それらを利用する鳥類にとっては繁殖しづらい環境であると考えられる。こうした人工林内でも、どのような条件であれば繁殖可能なのかどうかを明らかにするために、スギ人工林内に巣箱を設置したところ、ヤマガラ Parus varius の繁殖が経年的に観察された。そこで、繁殖の重要な要素である餌の利用を明らかにするため、親鳥が雛に与える餌(育雛餌)および周辺環境に生息する節足動物の種類と量を調査した。
調査は、愛知県豊田市の名古屋大学稲武フィールドの約55年生のスギ人工林で行った。林内の尾根や沢筋には小面積の広葉樹パッチが存在する。巣箱は2011年に20個、2012年に61個を約20 m間隔で列状に設置し、営巣した巣箱の出入口をデジタルビデオカメラで7-11時間連続撮影した。画像から、育雛餌を鱗翅目・膜翅目幼虫、直翅目、クモ目、その他に分類・計数し、体長を測定した。餌の分類群ごとに作成した回帰式を用いて体長から乾燥重量を算出し、育雛餌のバイオマスとした。周辺環境の節足動物については、採餌場所としての利用が考えられるスギと広葉樹について、月1回の頻度でそれぞれビーティング法とクリッピング法により樹上の節足動物を採集し、育雛餌と同様の解析を行った。
その結果、餌メニューでは、おもに鱗翅目・膜翅目幼虫を利用するつがいと、鱗翅目・膜翅目幼虫と直翅目の両方を利用するつがいが観察された。これまで、ヤマガラが育雛餌として直翅目を高い割合で利用することは知られていない。本発表では、直翅目を利用した要因を、各つがいが繁殖した時期と育雛餌のサイズ、スギ・広葉樹上から採集された餌動物の構成・サイズから検証する。