| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-244 (Poster presentation)

スズメの営巣密度と孵化率の関係

加藤貴大(立教大・理),松井晋(立教大・理),三上修(岩手医科大・共通教育),上田惠介(立教大・理)

鳥類では一般的に,1巣中の卵のほとんどが孵化することが知られている.しかし,スズメ目鳥類であるスズメPasser montanusの孵化率は非常に低く,6割程度であることが、近年、報告されている.産卵にも抱卵にもコストがかかるのに、なぜスズメの卵の孵化率はこんなに低いのか?これは非常に興味深い現象であるにも関わらず,その要因についてはまったく分かっていなかった.本研究では,孵化率に影響する要因として個体間の社会的相互作用に注目した.この点に注目した理由は、スズメは他のスズメ目鳥類と異なり、縄張りをほとんど持たず、高密度で営巣するため、個体間の相互作用が大きいと考えられるからである.調査地には巣箱密度の異なる2種類の地域を作成し,営巣密度の違いが孵化率に影響を与えるかを調べた.

調査は2012年4月から9月に秋田県大潟村で行なった.高密度地域として,巣箱間の距離が2m以下になるように,20個の巣箱を設置した.低密度地域では,巣箱間距離が約50mになるように38個の巣箱を設置した.巣箱設置後は一腹卵数と孵化卵数、未孵化卵数を確認するために、定期的に巣箱の中味をチェックして、繁殖経過の観察を行った.

巣箱観察の結果,高密度地域における孵化率は約5割(53.2%, n=24)であるのに対し,低密度地域では約8割(79.7%, n=24)の卵が孵化した.この結果から営巣密度と孵化率には関係性があることが示唆された.


日本生態学会