| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-245 (Poster presentation)
ウミガメ類の配偶システムの解明は、生物学的関心にとどまらず保全の観点からも重要である。野外では、雌が複数の雄と交尾するところが度々観察されているが、これを裏付けるように、最近の遺伝学的研究では多くの種や産卵地において複数父性(multiple paternity)が確認されている。ただし、その程度は一定ではなく、また産卵地ごとに異なる可能性が示唆されており、より多くの産卵地でこの現象の有無や程度を調べる必要がある。
日本は北太平洋唯一のアカウミガメ(以下本種)の繁殖地であり、保全上重要な役割を担っているが、日本へ産卵回遊する個体群では未だ複数父性現象は確認されていない。そこで本研究では、本種の複数父性について調査することでその配偶システムを明らかにし、また遺伝的多様性の保全に関する基礎資料を得る目的で、日本の主要産卵地の一つである和歌山県千里浜において調査を行った。
まず、2012年に産卵した母親とその子供からDNAサンプルを採取するとともに、母親の体サイズや孵化率を記録した。その後、採取したDNAサンプルを用い、4つのマイクロサテライト遺伝子座で遺伝子解析を行った。
その結果、日本の調査地においては初めて、本種の複数父性を確認することができた。
講演では、各産卵巣の複数父性の有無や程度と、野外調査で得た上記データを用いて複数父性が本種個体群にとってどのような意義をもたらすかについて考察を行う。