| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-264 (Poster presentation)

個体ベースモデルを用いた感染症の空間的拡大の研究

*内田さちえ(奈良女院, 人間文化),高須夫悟(奈良女, 理)

感染症の数理モデルは、感受性(S)・感染(I)・隔離(R)の3つのコンパートメントに分けて考えるSIRモデルをはじめとした集団レベルで記述された微分方程式モデルに基づくものが多い。本研究では、個体レベルの相互作用の総体としての集団レベルのダイナミクスの振る舞いに注目する。個体の視点に基づき、感染症の個体群動態ならびに感染パラメータの進化動態に迫ることを試みる。特に、空間個体群動態が感染症の拡大に及ぼす効果に注目した解析を行う。本研究の個体ベースSIRモデルのアルゴリズムは以下の通りである。個体は連続空間上の点として表され、各個体はS, I, Rいずれかの状態をとる。I個体は個体ごとに感染率、免疫獲得率、病毒性を持ち、SからIヘの遷移は、S個体の近傍のI個体が持つ感染率とS個体への距離に比例して起こり、IからRへの遷移は、各I個体が持つ免疫獲得率によって起こる。S個体は各状態の個体が局所密度に依存した出生を行うことで補充され、S個体とR個体は局所密度に依存した死亡率で、I個体は局所密度依存死亡率+病毒性で消滅する。モデルに含まれる本質的なパラメータは、局所密度の関数として出生率・死亡率を決める個体間競争が及ぶ距離、新規出生個体への分散距離、ならびに、感染が及ぶ距離である。本研究では、個体ベースSIRモデルの空間個体群動態の振る舞いを、各状態の個体数と6つのペア密度の動態として表すことで、感染の空間的広がりならびに感染率や病毒性などの感染パラメータの進化動態を解析する。


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