| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-276 (Poster presentation)

モウコガゼルの長距離移動は季節移動型か遊動型か?

*今井駿輔(鳥取大 農),伊藤健彦(鳥取大 乾燥地研),衣笠利彦(鳥取大 農),恒川篤史(鳥取大 乾燥地研),篠田雅人(鳥取大 乾燥地研),B.Lhagvasuren(WWF Mongolia)

モンゴルの草原地帯に分布する、中型草食動物のモウコガゼルは年間約1000 kmを超す長距離移動をする。ただし、その移動パターンは、夏と冬の特定の地域を毎年行き来する季節移動型ではなく、特定の季節行動圏や移動経路を持たない遊動型に近い数例が報告されている程度で、種全体としての移動パターンは明らかになっていない。そこで、モウコガゼル分布域の広域で衛星追跡した22個体を用いて、モウコガゼルの移動パターンの解析を行った。移動パターンは、各個体の夏と冬の位置をそれぞれ始点にして、その後1年間の始点と各時期の位置間の直線距離の変化から類型化した。その結果、移動パターンは個体により、季節移動型、遊動型、両者の中間型に分けられた。また同一個体でも始点が夏の場合と冬の場合では、結果が異なり、夏を始点にすると季節移動型になった個体が多かったのに対し、冬を始点にすると、遊動型や中間型になった個体が多かった。これは多くの個体が前年の夏に利用した場所に、次の年の夏も戻ってきたが、冬の利用場所は年により異なったことを意味する。また同一個体でも、年により移動パターンが異なる場合が観察された。これは植物量や積雪などの環境条件の年変動が影響したためと考えられる。モンゴルの降水量や積雪量は年変動が激しく、とくに冬季には積雪地域や積雪期間の年変動が大きい。そのため冬の利用場所の年による変化が大きい可能性がある。


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