| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-278 (Poster presentation)

ダイトウコノハズクによる隣接個体と未知個体の判別 ~”dear enemy effect”の検証~

*井上千歳(大阪市大・院理・動物生態),中岡香奈(大阪市大・院理・動物生態),高木昌興(大阪市大・院理・動物生態)

縄張り維持には利益がある一方でコストも伴う。縄張り保有者にとって、すでに縄張り境界が決まった隣接個体は、自身の縄張りへの侵入リスクの少ない比較的安全な敵である。そのため、不可侵である隣接個体と潜在的な侵入者を区別して防衛行動を変えることは、防衛コストの軽減に役立つと考えられる。声を学習する鳴禽類では、既知の隣接個体と未知の侵入者を声で区別して防衛行動を変えることが知られているが、声を学習しないとされているフクロウ類ではよくわかっていない。

ダイトウコノハズクは沖縄県南大東島に固有のフクロウである。我々の研究により縄張り防衛に用いられる雄の声は個体特有であることが分かっている。雄は経年的に同じ縄張りを維持し、その縄張りは帯状の樹林地内に一列に近接して並んでいる。そのため隣接個体との相互作用は大きく、隣接個体と他の侵入個体を判別して防衛行動を変えることは、本種でも防衛コストの軽減につながると考えられる。そこで我々は野外で録音再生実験を行い、本種が隣接個体と潜在的な侵入者である未知個体の声を判別できるのか、また隣接個体の声と縄張り位置の組み合わせを判別できるのか検証した。

実験は、2011年4-5月に南大東島で行った。対象雄に対して、縄張り境界位置から隣接雄および未知雄の声を再生した。再生位置は、隣接雄が通常位置している方向(通常)と、対象雄を挟んでその逆側の方向(逆)の2つである。再生後、対象雄の鳴き返しの有無を記録した。反応の有無に影響を与える要因の解析から、隣接雄より未知雄の声、また通常より逆位置の場合に、反応個体数が多くなることが分かった。

以上より、本種は隣接雄と未知雄の声を判別し、その位置に応じて縄張り防衛行動を変えていると考えられた。


日本生態学会