| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-347 (Poster presentation)

ボルネオ島の択伐林における音声録音による鳥類調査手法の開発

*丸山晃央(京大農),藤田素子(京大東南ア研),Mohammad Irham(RCB-LIPI),神崎護(京大院農)

本研究では、東南アジア熱帯域に生息するチメドリ科(Timaliidae)14種のさえずりを機械的に識別することを目的とした。熱帯における鳥類の多様性調査では、直接観察(ポイントカウント法など)が一般的である。しかし調査者の能力や環境要因の違いに結果が大きく影響されることから、経年変化や環境による群集の違いを正確に判断することは難しい。本研究の最終目標は、野外に設置したレコーダーで収録した音声データを解析するという、生物多様性調査法の開発である。これにより、客観性の高い群集の経年変化の解析や異なる環境における多様性の比較が可能になると期待される。チメドリ科は特徴的なさえずりをもつ種群である。藪などを生息環境とし、疎林から原生林まで生息種が変化するために、環境の違いを検出しやすい。音声はインドネシアのボルネオ島、中央カリマンタンにある択伐コンセッションの択伐林や保全林において、wav形式で録音した。十分な音声データが得られなかった種については、ウェブ上の音声データも使用した。MATLABを用いて、各音声データの持続時間、ケプストラム、自己相関の3つの特徴量を計算した。解析に使った音声データは、前処理として一節(繰り返しの一つの単位)を抜き出して、セミの声などの雑音を除去したものである。音声データの識別には、パターン認識手法として識別能力の優秀な学習モデルのひとつであるサポートベクターマシンを用いた。各種4~10サンプル程度の音声データを学習用データとテスト用データに分け、サポートベクターマシンで学習させた後、テスト用データを識別させ、正答率を各種ごとに比較した。その結果、種によっては、8割以上の高い正答率で識別することができ、機械的な識別が種の同定に有効である可能性が示唆された。


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