| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-358 (Poster presentation)

圃場整備地域における水田生態系の保全-用水路を活用した魚類の生息地再生-

*石間妙子,村上比奈子,福島純平,松島一輝,関島恒夫(新潟大・自然科学)

圃場整備による水田環境の悪化が懸念される中、近年では、環境保全型農業の実施や魚道の設置などによる水田生態系の保全が行われるようになっている。しかし、これらの保全策は、取り組み面積が未だ限定的であることに加え、保全対象生物の供給源の分布や移動ルートが考慮されずに実施されることが多いため、必ずしも効率的な環境再生が遂行できているわけではない。そこで本研究では、近代圃場整備が実施された新潟平野の水田地帯において、魚類を保全対象とした戦略的な水田環境の再生計画を提案することを目的とし、水田への魚類の移動ルートを特定するとともに、供給源である用排水路の魚類分布を予測した。

新潟平野の水田では、水田と排水路間の水位差が大きいことから、排水路を介した水田への魚類の遡上はほとんど不可能な状態だった。さらに、排水路における魚類の種数や生息密度は、水路の物理構造や河川との距離および連結性によって異なっていた。この結果は、排水路を魚類の供給源と考えて水田での生息地再生を行うためには、まずは水田-水路-河川間の落差を解消する必要があるだけでなく、それらの保全策を効率的に実施できるエリアを特定する必要があることを示唆している。一方で、これまでに供給源として重要視されてこなかった用水路からは、現状のままでも多くの魚類が水田へと侵入しており、用水路も水田への魚類供給源として十分に機能していることが明らかとなった。ただし、用水路の魚類組成によって水田へ侵入する魚類の組成も大きく異なっていたことから、用水路を供給源とする生息地再生を行う場合にも、効率的な保全が可能なエリアを特定する必要があるといえる。これらの結果を踏まえ、本発表の最後には、新潟平野の用排水路における魚類の分布予測図を提示し、戦略的な魚類保全計画を提案したい。


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