| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-373 (Poster presentation)

外来ニジマスの流域内分布パターン-生活史との関係-

*金澤友紀代,山崎千登勢,田中友樹,高屋浩介(北大・環境科学院),小泉逸郎(北大・創成)

ニジマスは世界の侵略的外来種ワースト100に指定されているサケ科魚類である。日本においては釣魚として高い人気があり、全国の河川に放流されている。一方で、希少魚であるイトウを含め在来生態系に悪影響を与える例が報告されており、今後は状況に応じて駆除などの個体数管理を行う必要がある。ニジマスを効果的に駆除するためには、どのような環境に多く分布しているのかを知ることが重要である。しかし本種は季節によって生息場所を変えることが知られており、特に冬期の分布は不明な点が多い。いくつかのサケ科魚類では冬期に局所的な生息地に集合することが報告されており、もしこれが外来ニジマスにも当てはまれば効果的な駆除に役立つと考える。本研究は異なる季節において分布や個体群構造を調べることにより、ニジマス管理に有効な情報を提供する。

調査は2012年夏期(7~9月)と冬期(12月)に北海道音更川の10支流において行った。それぞれ200~400メートルの調査区間を設け、電気ショッカーを用いて採捕を行った。捕獲した個体は体長と体重を記録し、一部持ち帰って性別を調べた。

夏期は10支流中9支流にニジマスが生息しており、捕獲個体数は2~44匹であった。一方冬期は4支流で個体数が激増し、通常は見られない異常な密度となった(捕獲個体数:84~447匹)。他5支流は捕獲数が変化しないか減少していた。また、夏期はほとんどの支流で性別がオスに偏っていたが、冬期は性別がメスに偏るか1:1に近づいた。

以上から、冬期には多くのメス個体が支流へと移入してくることが示唆された。個体群増加に関わるメス個体を、冬期の捕獲によって効果的に間引けることが期待できる。支流によって個体数増加の程度が異なることから、今後はそれに関わる環境要因を調査する予定である。


日本生態学会