| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-393 (Poster presentation)

マレーシア熱帯雨林の原生林と二次林における物質循環の違いとその要因

*段理紗子,黒川紘子(東北大・生命),中川弥智子(名古屋大・生命農),兵藤不二夫(岡山大・異分野コア),中静透(東北大・生命)

森林生態系において落葉分解は物質循環の一端を担う重要なプロセスである。気候・落葉の質・分解者群集が落葉分解に影響を与える主な要因として知られているが、どの要因が相対的に重要であるかについての理解はまだ不十分である。本研究では、原生林と二次林における落葉分解速度の違いとその要因を明らかにする。落葉分解速度は2種類の方法で調べた。まず、原生林と二次林で微環境に幅のある16か所を選び、17種を用いてリターバッグ法による分解実験を行った。その結果、17種の落葉分解速度の平均値は、二次林より原生林の方で高かった。つまり、落葉分解は原生林で進みやすい。一方、落葉生産量と落葉堆積量の比による分解速度は、原生林と二次林で違いは見られなかった。このことは、原生林の環境は分解が進みやすいが、原生林が生産する落葉は分解されにくい形質を持っていることを示唆している。次に、落葉分解に影響を与える要因を明らかにするため、落葉の機能形質、土壌物性、土壌微生物活性などを説明変数としてGLMM解析を行った。その結果、落葉の強度、土壌窒素濃度、及び原生林と二次林の違いが選ばれ、最も分解速度と強い相関を見せたのは落葉の強度であった。このことは、原生林でも二次林でも生産される落葉の形質から分解速度がある程度予測できることを示している。さらに、原生林と二次林における微環境の違いも重要であることがわかった。同じ環境で土壌分解者群集の呼吸を測定したところ、二次林よりも原生林で高かった。つまり、二次林よりも原生林で土壌微生物の活性が高く、このことが原生林での分解の進みやすさに寄与していると考えられた。以上の結果は、原生林の二次林化に伴う分解速度の変化を予測する際、落葉の形質だけでなく、土壌環境などの考慮も重要であることを示唆している。


日本生態学会