| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-395 (Poster presentation)

冷温帯コナラ林およびアカマツ林におけるリター層含水比動態とリター層呼吸の制御要因

*増田莉菜,友常満利(早稲田大・院・先進理工),吉竹晋平(岐阜大・流圏セ),小泉博(早稲田大・教育)

リター層は森林土壌の最上層に堆積しているため、他の土壌層に比べて温度や水分条件の変動が激しく、それに伴って呼吸速度も変化していることが考えられる。しかし、リター層の水分状態の連続測定は困難であり、リター層の乾湿がリター層呼吸速度に与える影響を定量化した研究は少ない。本研究では長野県軽井沢の冷温帯コナラ林およびアカマツ林においてリター層の含水比と温度の連続測定を行うとともにリター層呼吸速度を測定し、リター層呼吸の制限要因および林分間の違いを明らかにすることを目的とした。

含水比はDC-HBセンサーを用いた装置を構築し、温度は市販の測定装置(Tidbit v2)を用いて、両林分で連続測定を行った。また、毎月林床から採取したリターの温度および含水比を調整し、赤外線ガス分析計を利用した密閉法を用いて、実験室にて呼吸速度を測定した。その測定結果から温度-含水比-呼吸速度モデルを月ごと作成した。

その結果、含水比は両林分において降雨により大きく上昇し、その後乾いていくといったサイクルを繰り返していた。また、コナラ林のリター層の方がアカマツ林のリター層よりも保水性が大きかった。リター層呼吸速度は含水比が上昇するとそれに伴って大きく上昇した。また、リター層呼吸量の積算値はコナラ林の方が高かったが、それは含水比の違いによる影響であると考えられる。さらにR10やQ10などの呼吸活性は含水比によって変化し、特にR10は季節変化を示し、林分間で値が異なっていた。

これらの結果から、含水比はリター層呼吸の主な制御要因として働いており、さらにリター層の保水性や呼吸の応答性を通して、林分間におけるリター層呼吸の違いに影響を及ぼしていることが示唆された。


日本生態学会