| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-047 (Poster presentation)

エゾエンゴサクにおける主に花器形態に注目した集団間比較

*山岸洋貴(弘前大学・白神), 藤原久司(株ズコーシャ), 本多和茂(弘前大学・農生)

エゾエンゴサク(Corydalis fumariifolia subsp. azurea)は北海道に生育する春植物で、小葉や花器、果実などの外部形態に多様な種内変異が存在することが知られている。しかし、この多様な変異に関して、その変異パタンや遺伝的背景は未だ明らかにされていない。これらを整理し明らかにすることは、種内に多様な形態を持つという進化の過程やその背景を解明する上で重要である。北海道内の十数集団を調査対象にしたこれまでの研究から、葉形態の変異は集団内でも観察され、その集団内での出現頻度は集団間で異なっており、さらにそれらには地理的傾向があることが明らかになった。道北や道南の集団では、集団内に大きな変異がほとんど観察されず、一方、道東および道央の一部の集団では切れ込みや小葉片が多いなどといった変異が高頻度で出現した。本研究ではこれまでの葉形態の調査に加え、繁殖に関わる花器形態に注目し、新たに複数の形質(花弁および距の長さや形状、蜜腺の長さなど)を計測し集団間比較を行った。また、かつてCorydalis ambiguaとして同種と考えられていた本州北部に生育するオトメエンゴサク(C. fukuharae)に関してもその実態を明らかにするため、青森、岩手、秋田、新潟の複数集団を加え同様な調査を行った。これらの結果、両種ともに多様な花器形態が存在するものの、花弁や距の長さなど計測した部位における集団間の統計学的な差はほとんど認められなかった。また、両種の分類点であると考えられている距の形態や蜜腺と距の長さの相対的な関係ついても比較したところ両種の集団間に明瞭な差がなく、原記載と異なることが明らかになった。さらに葉緑体DNAを利用した遺伝的解析においても両種間の差は小さく、分類に関して新たな見解が必要であることが示唆された。


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