| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-062 (Poster presentation)

植物個体レベルの地上部地下部比調節メカニズムの解析: 植物ホルモンによるローカルおよびシステミックな調節

*杉浦大輔(東大・院・理), 小嶋美紀子, 榊原均(理研PSC), 寺島一郎(東大・院・理)

植物ホルモンの添加実験および内生植物ホルモンの定量結果から、ジベレリン (GA) とサイトカイニン (CK) などの植物ホルモンが個体レベルの地上部地下部比の調節に果たす役割を考察した。

発表者のこれまでの研究から、植物個体レベルの葉/根比 (L/R)、葉の厚さ (LMA) や葉面積あたりのN濃度 (Narea) などの物質分配パターンは、光環境に応じた葉のN需要および土壌からのN供給に応じて、相対成長速度 (RGR) を最大化させるように調節されていることが示唆された。また、数理モデルからは、環境変化や、葉や根の損傷に応じてL/Rを最適に調節するには、葉面積あたりのC同化速度とN吸収速度の比を認識し、新葉の成長速度を制御することで実現可能なことが示された。

本研究では材料としてイタドリを用い、強・弱光、N貧・富栄養条件下で生育させた際の、(1) GA、CK、GA合成阻害剤を添加したときの形態的・生理的形質の変化の解析、(2) 内生植物ホルモンの定量的解析 (理研PSCと共同研究) を行った。実験 (1) からは、GAやCKによってL/RやLMAが大きく変化し、これらの形態的変化を通じてNareaやRGRが決定されることが分かった。実験 (2) の内生植物ホルモンのプレ解析からは、光環境に関わらず葉面積あたりのGAと葉/根比が相関関係を持つことから、GAが個葉のサイズをローカルに制御し、システミックに葉の枚数を制御することで、最適なL/Rが実現されている可能性が示唆された。当日は、環境変化に応じた内生植物ホルモンの詳細な解析と、個葉の光合成速度、糖濃度、硝酸濃度などのパラメーターから、個体レベルの地上部地下部比調節メカニズムについて議論する。


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