| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-071 (Poster presentation)

貧栄養条件下の熱帯林における主要構成樹種の葉の窒素再吸収特性

*宮本和樹(森林総研四国),Reuben Nilus(サバ森林研究セ)

土壌条件の異なる熱帯林の森林タイプにおける、樹種間の栄養塩利用特性の違いを明らかにする目的で、主要構成樹種の生葉と落葉のサンプリングを行い、栄養塩の再吸収特性を種間および森林タイプ間で比較した。今回は窒素に関する報告を行う。調査地は、東マレーシア(ボルネオ島)、サバ州ナバワンの貧栄養条件下に成立する熱帯ヒース林で、種組成や土壌栄養塩の可給性が異なると考えられる2つのタイプの森林(Large crownとSmall crown)が隣接している。各森林タイプの優占種について、樹冠部の生葉および落葉直前の葉をサンプリングし、葉における窒素の再吸収特性を再吸収効率(Resorption efficiency、以下RE)と再吸収プロフィシエンシー(Resorption proficiency、以下RP)という2つの指標で比較した。REは生葉中の栄養塩が落葉までに引き戻された割合(1 - 落葉の栄養塩濃度/生葉の栄養塩濃度)である。一方、RPは落葉中にどれだけ栄養塩が残っているかを示すもので、単純に落葉中の栄養塩濃度として表される(ただし、RPが高い=落葉中の栄養塩濃度が低い)。分析の結果、各樹種のREは約40~50%の値を示し、森林タイプ間および種間で有意な差は見られなかった。一方、RPは森林タイプ間で有意に異なり、Small crownタイプの優占種の方がLarge crownタイプの優占種よりも落葉中のN濃度が有意に低く、RPが高いことが示された。また、同一森林タイプ内においてはRPに種間差はみられなかった。以上のことから、各森林タイプにはそれぞれのN利用環境のレベルに応じた特性をもつ樹種によって収斂していることが示唆された。


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