| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-161 (Poster presentation)

夏期の都市気候が緑化樹木の光合成・炭素安定同位体比に及ぼす影響

半場祐子(京都工繊大),籠谷優一(京都工繊大),田中久美子(京都工繊大)

都市域の緑化樹木の光合成は、大気汚染やヒートアイランドなど都市特有の環境の影響を受けている。近年日本の都市域では大気汚染対策が進み、京都市においては二酸化窒素などの大気汚染物質の大気中における濃度は漸減あるいは横ばい傾向にある。これに対してヒートアイランド化はますます顕著になっており、特に夏期の太平洋側において、梅雨明け後の晴天がもたらす著しい高温と小雨による影響を強めている可能性がある。本研究では京都市を調査地とし、梅雨明け後の都市域と郊外、および梅雨期と梅雨明け後の緑化樹木の炭素安定同位体比およびガス交換測定の結果を比較することにより、1)夏の都市域における緑化樹木の光合成機能、2)緑化樹木の光合成機能に対する高温・乾燥の影響 を調べるための調査を行った。ソメイヨシノの街路樹を用いた調査では、8月〜9月には郊外よりも都市域の方が高温で土壌・大気ともに乾燥傾向にあった。また、郊外と都市域の葉の炭素安定同位体比は顕著に異なっており、大気中CO2の同位体比ではなく同位体分別が強く影響していることが示された。都市域の方が炭素安定同位体分別は小さく、光合成速度・気孔コンダクタンスは低かったことから、都市域の高温・乾燥が長期的な水利用効率の増加をもたらしていること、また気孔の閉鎖が光合成速度を減少させたことが示された。またトウカエデ、イチョウ、ソメイヨシノの街路樹ではいずれも、梅雨明け後に光合成速度・気孔コンダクタンスが共に低下していたことから、梅雨明け後の光合成速度の減少には気孔の閉鎖が強く影響していることが示唆された。


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