| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-166 (Poster presentation)

都市域の民有緑被構造にゾーニングと市街化年代が与える影響

*土屋一彬,原祐二(和歌山大・環境)

都市域には河川敷などの大規模な緑地に加えて、住宅の庭などの小規模な緑地が分布している。近年こうした緑地の生物多様性と生態系サービスへの貢献が注目されており、なかでも小規模緑地には、マトリックス空間としての鳥類生息環境への寄与や、ヒートアイランド現象の緩和などの効果が期待されている。こうした小規模緑地の多くは民有地に立地しており、その分布は都市計画制度における用途地域区分(ゾーニング)などの開発規制に規定されていると想定される。また、小規模緑地の緑被は樹木の成長とともに増加してきた一方で、建築物の更新や強度の剪定にともない、地区によっては減少もしてきたことが予想される。そこで本研究では、小規模緑地の保全・創出方策の発展に寄与することを目標に、用途地域および市街化年代の違いが民有緑被構造にどのような影響を与えているかを検証した。

対象地は、多様な用途地域や市街化年代を含む大阪府堺市北西部とした。対象地の緑被構造を把握するために、Worldview-2衛星の2011年5月撮影マルチスペクトル画像を用いたオブジェクトベースの画像解析をおこなった。さらに、地形図などの地図情報を用いて、抽出された緑被を所有形態などの社会経済的な属性に基づき分類した。また、都市計画図および過去4時期(1930年、1950年、1970年、1990年ごろ)の2万5千分の1旧版地形図をGIS上でデジタイズし、対象地の用途地域と市街化年代を区分した。解析単位として、複数のサイズで対象地内にランダムにメッシュを発生させた。そして、メッシュごとに緑被率などの緑被構造に関する指数を計算し、この指数を目的変数として用途地域区分および市街化年代の影響を検証した。その結果、用途地域については、その建蔽率と緑被構造の間に強い関係がみられた。市街化年代ごとの緑被構造の違いも確認され、市街化年代を考慮して緑化目標を検討する必要性が示唆された。


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