| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-216 (Poster presentation)

祖先形質推定において系統樹の不完全性が及ぼす影響

*川森愛,沓掛展之(総研大・先導研)

系統種間比較法の発展により,系統樹の末端種(外部節)の形質値を用いて,共通祖先種の形質値を推定する方法が開発されている.その際,系統樹の情報が不可欠であるが,完全な系統樹を知ることは難しい.系統樹に不完全性をもたらす要因は大きく分けて2つある.1.欠損種による不完全性.外部節の中に絶滅種が含まれている場合,その種のデータは得られない.また,現生種であっても,生息地域や生態環境によっては完全なサンプリングができるとは限らない.2.分岐年代の不確実性.種の分岐は過去のどこかで起こったイベントであり,その年代を完全に知ることはできず,分子系統学的手法による様々な推定に頼らざるを得ない.これらの2つの不完全性は祖先形質推定にも影響を与える.我々はコンピュータシミュレーションにより架空の系統樹を作成し,これらの不完全性の影響を調べた.完全な系統樹を用いて推定した共通祖先種の形質値をAとすると,不完全な系統樹を用いた推定値はAの周りにばらついて分布する.欠損種数が多くなるほど,また,分岐年代の不確実性が大きくなるほど,分布の分散は大きくなり,推定精度は悪くなる.では,分岐年代が不確実な種が欠損した場合,欠損した不確実性は祖先形質推定にどのような影響をもたらすだろうか.また,欠損種数が同じであっても,近縁種がまとまって欠損する場合,系統樹の深い部分(より共通祖先種に近い部分)にある内部節まで失うことになる.欠損する系統樹の深さは,祖先形質推定にどのような影響をもたらすだろうか.これらの課題について検証した結果を報告する.


日本生態学会