| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-249 (Poster presentation)

地球温暖化が水田の土壌生物に及ぼす影響

*岡田浩明, 酒井英光, 常田岳志(農環研), 中村浩史(太陽計器), 長谷川利拡(農環研)

水田には様々な生物が生息しているが、それらに対する地球温暖化の影響を調べた研究は少ない。そこで、茨城県つくばみらい市の水田にFACE(開放系大気CO2濃度増加)装置を設置し、50年後の温暖化の条件を想定したCO2濃度及び水温の上昇が水田の土壌生物に及ぼす影響を明らかにしようとしている。岩手県で行われた先行研究によれば、CO2濃度の増加により、水稲の生育量はもちろん、土壌微生物のバイオマスも増加することが示されている。本研究ではさらに、より上位の栄養段階に位置する土壌線虫の密度にも食物連鎖を介してCO2濃度などが影響するかを検討している。2011年は水稲根量および線虫密度を中心にして調べた。CO2濃度を現状より200ppm高めた「FACE区」及び対照区である「Ambient区」を主区とし、その中に副区として、電熱線により水温を2℃高めた「加温区」及びその対照区である「無加温区」を設置した。各区から田植え前の5月及び7,8月に土壌を採取し、水稲根量及び主な線虫種の季節消長を調べ、一般化線形混合モデルにより、CO2、温度および季節の影響を調べた。その結果、水稲根重密度は予想通りFACE>Amb、加温>無加温であったが、有意ではなかった。線虫の反応は種ごとに異なり、密度がわずかにFACE>Ambとなる種はいたが、有意な違いではなかった。一方、温度の影響は有意で、明らかに加温<無加温となり、高温で密度が低下する種がいた。なお、CO2と温度との相互作用が有意である種はいなかった。以上により、水稲はCO2や温度の増加により少しずつ生育が促進されるが、線虫ではCO2増加の影響は受けない一方、高温により増殖が抑えられる種がいることがわかった。


日本生態学会