| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-259 (Poster presentation)

沖縄島サンゴ礁群集形成機構解明のための4つのアプローチ:その参 定住性捕食者ギルドの変異性から考える

*宮岡勇輝,鈴木祥平,河井崇,坂巻隆史(琉球大・亜熱帯)

生態系の中で捕食者は多様な餌生物や生産者によって支えられている.そのため,捕食者の生態情報は,生態系の健全性を評価する指標として有望視されている.サンゴ礁生態系は生物多様性が高く複雑であるが,適切な捕食者を調べることでその健全性を評価することができる可能性がある.サンゴ礁域の捕食者の中でも,小型ハタ類は個体数が多く捕獲が容易であること,定住性が強く周辺環境の影響を受けやすいことなどの特徴から生態系の評価基準として適していると考えた.本研究では沖縄島周辺海域の36地点で小型ハタ類を採集し,同地点で得られた多項目の環境データと合わせて解析することで,小型ハタ類の生態情報がどのような環境要因を反映しているのか調べた.

本調査では6種の小型ハタを採集した.それらの出現パターンがどのような環境要因で説明できるのか調べるため,各種の出現・非出現の2値データを応答変数として一般化線形モデルを用いた解析を行った.また,各種の優占率がどのような環境要因で説明できるのか調べるため,優占率比(ある種の個体数/他種の個体数)を応答変数として一般化線形モデルを用いた解析を行った.次に,各個体の肥満度relative condition factor Krel=W/aLbを算出しコンディションの指標とした.Krelの変化がどの環境要因によって説明できるのか,一般線形混合モデルを用いた解析を行った.これらの解析結果から小型ハタ類がサンゴ礁生態系の健全性評価基準となりうるか考察した.

本研究では生息確率,優占率比,Krelの3つのスケールに影響を与える要因がどの種においても異なるという傾向が見られた.この結果は,生存,競争,コンディションを左右する条件が異なることを示している.


日本生態学会