| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-261 (Poster presentation)

沖縄島サンゴ礁群集形成機構解明のための4つのアプローチ:その壱 生態特性により環境と空間の支配度は変わるのか?

*河井崇,坂巻隆史(琉球大・亜熱帯)

生物群集の形成における環境プロセスと空間プロセスの相対的重要性について,近年理論・実証研究が共に進められており,特に陸上生態系における豊富な知見をもとに議論が深まってきている.しかしながら,開放性がより高い海洋生態系を対象とした実証研究は非常に少ない状況にあり,群集形成プロセス解明のための議論を進めるためには,様々な地域における情報の蓄積が求められている.そこで演者らは,沖縄島サンゴ礁斜面貝類群集を対象として,その形成における環境・空間プロセスの相対的重要性を評価するための野外実証調査を実施した.調査に際しては階層的サンプリング法を用い,沖縄島全域にかけた12河口に調査サイトを設定し,各サイトに3ステーション,各ステーションに3トランセクト(計108トランセクト)を設置した.そして,各トランセクト(15m×1m)上でコドラート(50cm×50cm,6個)を用いて目視可能な全ての貝類を採集した.また環境要因として,栄養塩濃度・生元素比等の化学的性状,地形・水流等の物理環境,サンゴ等基盤形成生物を含む基質の構成を各トランセクト上で測定した.RDAを基にした分散分割法を用いて,環境要因と空間配置による貝類群集の支配度の相対的重要性を評価した.

沖縄島サンゴ礁斜面貝類群集においては,普通種・稀種ともに環境プロセスだけで説明される割合が,空間配置だけで説明される割合を大きく上回った(環境%:空間%,沖縄島東海岸普通種26:1,東稀8:0,西普通14:2,西稀2:1).この結果より,貝類群集は基本的に環境に強く支配されていることが明らかとなった.しかしながら,普通種と稀種では支配している環境の空間スケールが異なる可能性が示唆された.


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