| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-276 (Poster presentation)

ナスミバエのメスの配偶者選好性を実験的に進化させる

*栗和田隆(九沖農研),原口大,小濱継雄(沖縄農研)

交尾の際にオスの違いによってメスの適応度が異なる場合、より利益を与えるオスに対するメスの選好性が進化すると考えられる。したがって、交尾時の利益とオスの違いとを結びつけて操作し累代飼育をおこなえば、メスの選好性を実験的に進化させることが可能になるかもしれない。これは「配偶者選好性の進化」という性選択の研究における中心的課題に対する直接的な実証となり得る。本講演ではナスミバエBactrocera latifronsという害虫を対象に、不妊虫放飼法を利用した実験進化学的な研究について発表する。不妊虫放飼法とは、大量に増殖した害虫を不妊化した後に野外に放し野生のメスの正常な繁殖を妨げることで、害虫個体群の抑制・根絶をおこなう手法である。不妊虫の精子だけでは次世代が全く残せないため、選択はかなり強く働くと考えられる。今回は不妊オスと正常オスの入り混じった環境でメスを9~11世代飼育し、正常オスに対するメスの選好性が進化するのかを検証した。また、不妊オスと交尾した場合と正常オスと交尾した場合とで、メスの再交尾率に違いがあるのかも検証した。さらに、正常オスに対して前翅に人為的に模様を施し不妊オスとの識別をより容易にした上で選択をかけることで、人為的な模様に対するメスの選好性が進化するのかも検証した。本講演ではこれらの結果を基に、メスの配偶者選好性の進化について議論する。


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