| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-285 (Poster presentation)

ニホンジカの性的二型は生息地の生産性に依存する

*寺田千里, 齊藤隆(北大・FSC),Bonenfant, C. (UMR CNRS)

体サイズの性的二型が顕著に見られる大型哺乳類などの種では、その二型が地理的にも変異することが知られ、性選択に関わる環境要因の分析対象として適している。体サイズの性的二型をもたらす背景に、オスとメスが体サイズの成長や維持に関するエネルギーの配分について、異なる戦術をとることがある。オスでは、繁殖成功度が体サイズに依存するので、エネルギーの大部分を成長にあてる戦術をとる。成長への投資は、餌資源量やエネルギー消費に関わる環境要因の影響を受けるため、オスの体サイズは餌資源に関わる要因に依存すると予測される。一方、メスでは、繁殖成功度が体サイズに強く依存しないため、一定の成長を遂げると、繁殖にエネルギーを配分する。そのため、メスの体サイズは、環境の変異に対してオスより保守的であると予測される。したがって、オスの体サイズは、メスよりも、餌資源量やエネルギー消費に関わる環境要因の変異により強く反応すると考えられる。つまり、性的二型の程度はこれらの環境要因と関係しているという仮説が立てられる。また、性選択が起きやすい環境(例えばハーレム形成に影響する環境要因)にも注目する必要がある。本研究では、日本列島に生息するニホンジカを対象に、性的二型の地理的パタンを明らかにし、性的二型の地理的変異に関わる上記の仮説を検証することを目的とした。性選択に関与する要因として森林率を用いたが、性的二型の程度との有意な関係は見られなかった。一方、餌資源量の指標として使った秋(もしくは冬)のNDVI(正規化植生指標)と性的二型の程度には、正の関係がみられた。このことから、秋や冬の餌資源の量が性的二型の程度に関わっていることが示唆された。


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