| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-286 (Poster presentation)
京都市鴨川には,桂川合流点から山地渓流域の雲ヶ畑や八瀬までに合計80個を越える落差工が存在し,うち落差が大きく魚道の無いものが50個もある。2010年5-7月には,最下流の龍門堰下流で天然アユが多数滞留している状況が観察された。そこで,京の川の恵みを活かす会では,2011年5月26日-7月16日,2012年5月10日-7月24日の間に,龍門堰に仮設魚道を敷設し,2011年は27日間,2012年は40日間,6時〜17時のうち8時間に毎30分に10分間ずつ遡上する魚類個体数を大中小に分けて計測した(放流アユは大,天然アユは中,小)。また,遡上した天然アユの到達場所を把握するために,両年の8月に鴨川,賀茂川,高野川の全13km区間について潜水目視による魚類相調査を実施した。
2011年には遡上魚数が計6,102尾計数され,未計数の時間帯を補完した遡上総数は21,858尾(うちアユ19,672尾),2012年には計7.466尾が計数され,遡上総数は32,407尾(うちアユ29,490尾)と推定された。未計測日の遡上数を加味すると2011年には2万尾(天然アユ18,735尾)以上,2012年には3万尾(天然アユ25,530尾)以上が遡上したと考えられた。
龍門堰を遡上した天然アユは,2011年8月には四条大橋落差工まで到達し,ここに魚道を設置した2012年には二条大橋落差工まで到達した。また,2011年夏には勧進橋から七条大橋の区間,2012年夏には水鶏橋より下流区間に多く留まっており,水温が30℃を越える夏期の日中には,地下水の湧出する場所に集結することがわかった。落差工によって遡上が妨げられている鴨川では,湧水が滞留するワンドがアユの生息場として重要になると考えられる。