| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-291 (Poster presentation)
静岡県富士宮市の酪農地帯にある東京農業大学富士農場において、2001年から2012年にかけて12年間、小哺乳類のモニタリング調査を継続した。調査場所は牧場を帯状に取り囲むように位置する樹高約15mのスギ・ヒノキ造林地である。毎年5-7月と8-9月に各1回、毎年平均延べ1,800個のシャーマントラップを設置した。捕獲個体の大部分はアカネズミとヒメネズミであった。通常年におけるアカネズミの捕獲率は平均2.0%(0.4-3.3%)であったが、2006年に7.5%、場所によっては14.5%と高い値を示し、2012年も5.0%と通常年よりも高い値を示した。ヒメネズミの捕獲率も2006年に2.5%と若干高くなったが、他の年における平均1.0%(0.3-2.2%)の捕獲率と比べて、変動幅は少なかった。2012年における増加はヒメネズミには見られなかったが、これは牧草地周辺の樹林面積が2008年以降に減少したために、ヒメネズミが減ったためと思われた。2006年におけるアカネズミの急増は東京都奥多摩地域でも報告されており(小野ら, 2011)、その原因は前年の2005年にブナ類堅果が豊作であったこととされる。本調査地内に餌となる堅果はほとんど存在しないが、約500m離れた周辺山地にはブナクラス域代償植生が広がっていることから、本調査地においてネズミ類が2006年と2012年に多かったことは、ブナ堅果が約6年周期で豊凶を繰り返すことの影響が、周辺地域にも及んだためと考えられた。堅果類の豊凶はツキノワグマの行動にも影響を及ぼすとされ、2006年におけるクマ大量出没の一因は堅果類の不作が一因とされている。2012年のクマ捕獲数(速報値)も例年よりも多い。クマの出る年はノネズミも多いといえよう。